リタイヤしたら学会へ行こう
ディペックスのさくまさんが発表するというので
今年度のディペックスでの研究の下調べも兼ねて
初めて「日本女性学会大会」というのに参加してみる。
今年は母校での開催ということで、茗荷谷下車も久しぶり。
卒業以来数十年経つが、数年前に幼稚園のホームカミングデイで
クラス会をやっているから、まあ懐かしいというほどではない。
この間は気づかなかったが、校門の前にあった
「スウィートコーナー」という小さな喫茶店とも
ミルクスタンドともいえないひなびた店は
小さなこじゃれたカフェになっている。
昔、この店は白髪の顔の長いおじいちゃんがやっていて
背の高い双子みたいな兄弟がいた。
だからというわけではないが、高校生だった頃は、
よく入り浸っていたものだ。
校門から講堂へまっすぐのびている並木道のイチョウは
一段と大木になったような感じがして年月を感じさせる。
講堂で受付を済ませるが、事前のインフォメーションが違っていたのか
目指す部屋がなかなか見つからず、散々ウロウロして、
やっと講堂の奥にある部屋がそうだと分かる。
生活科学部の教室みたいで、こじんまりとしているが
それでも60人ぐらいは入るだろう。
受付でわたされた「入会のお誘い」というのには
「日本女性学会は、あらゆる形の性差別をなくし、男性視点で構築された
既成の学問体系をこえた女性学の確立をめざし、そのための研究と
情報交換をすることを目的とした学会」と書いてあって、
女性学というのがあるなら男性学もあればいいのになんて考える。
現実を端から当たり前と考えていると、
そういう発想はなかなか出てこないのかもしれない。
ひとつの分科会の持ち時間は1時間40分で、発表者は3人。
ひとり20分に質疑応答が10分あり、このゆったりさはなかなかよい。
提出されるいろいろな演題は、ざっくりとした共通項でくくってあって
極めてアバウトだが、ここから何を得るかは聞く側の感性ということだろう。
さくまさんの演題が出ている第2分科会は、彼女の
「がん治療における性ホルモン抑制とジェンダーの揺らぎ」のほかに
「科学技術とリプロダクティブ・ライツ」
「日本を再び男性化する:国家的理念の表象としての太陽の塔」
といった具合で、司会者曰く「身体でくくってみました」
座長なんて偉そうな言葉を使わないのもよい。
「がん・・」も「科学技術・・」の発表も面白かったが
この分科会でもっとも衝撃的だったのは最後の「日本を男性化する:・・」だった。
大阪万博のために岡本太郎が制作した太陽の塔が
八紘一宇のイデオロギーを再生させるものだったというのである。
八紘一宇とは八方の方位をひとつに統一するという意味で
「世界をひとつの家にする」と唱えられて大日本帝国の国是として使われた。
大阪万博では、男の頭と女性の身体で構成させた太陽の塔を
巧みに配置させることで、八紘一宇のイデオロギーを再生し
家父長制イデオロギーを補強した、というのがこの発表の要旨である。
太陽の塔の表象は、敗戦、占領体験で、日本と彼らのマスキュリニティ(男性性)を
去勢されたと感じていたナショナリスト達が、
その屈辱感を象徴的にくつがえし、日本を男性化する方途だった、というのである。
大阪万博は遠いし特別に興味もなかったから見に行くことはなかったが、
国家的イベントというのは、多かれ少なかれ国家の何らかの意図がある。
それをどのような視点で読み解くかによって、見えてくるものは異なる。
どれが正しいとかいうことではなく、どのような解釈の可能性があるか
ということが分かることが大事なのだろうと思う。
岡本太郎は一般的にはアヴァンギャルドな芸術家として知られている。
質疑応答でもこの点からの疑問が出されたが、当時の制作グループには
小松左京や黛敏郎などさまざまな人間が関わっており
それが、さまざまに作用していたのだろう、と発表者は解釈していた。
せっかく参加したので、引き続いておこなわれた第4分科会の
「第1次から第6次『主婦論争』にみるジェンダー規範の変容」というのも
聞いて帰ることにする。面白い発表だったが、規範が変わったということを
実例を提示して説明するだけでなく、なぜ変わったのかという点まで
踏み込んでもらえると、もっと面白かったなあと思いつつ、学会を後にする。
専門用語のような仲間内の言葉を頻発させて仲間だけで楽しむのも悪くはないが、
それだけだと共同体はひたすら自閉していく。
今回のような実生活から発想していく学会は、もともとはさまざまな人に
開かれていて、それこそ「衆知を集める」のが目的だろう。
新たな知識というより、新たな視点を得るだけで、随分情報化は進む。
下手なシンポジウムより、よほど有益かもしれない。
これで2日間の参加費はたったの500円だしー。
これからの時代は、「リタイヤしたら学会へ行こう」を合言葉にしたらどうだろう。
ERテレフォンクリニックウェブサイト: http://homepage2.nifty.com/er-telclinic
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