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2006年8月22日 (火)

まな板の鯉

Medi-Waというソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)の
NON(Not Only Nurse)というコミュニティが、
初めての勉強会を開くというので、面白そうだなと参加表明をしたら、
事例を提出するはめになってしまった。
「相談とは」「相談を受ける側の役割とは」を考えるのに、
電話相談から適当なケースを出してほしいというのである。

20年くらい前までは、インターネット上で人と知り合い、
その後顔をつき合わせて仲よくなるなんてことは、
人見知りをする自分には、およそ「ありえない」ことだったが、
時の流れというのはオソロシイものである。
環境は人を変えるのネ。

どんな事例が適当か考えた末に、ある精神疾患の母親のケースを選ぶ。
もちろんこれは、こんな難しいケースもあるぞってプレゼンをしたいからではなく、
「相談を受ける」ということは、「相手が望むような関係を結ぶこと」
だってことを言うのに、適当だと考えたからだ。
普遍的なことを考えるために、もっともいい方法は、
もっとも極端なケースからアプローチすることだというのは
長年の経験から学んだことでもある。

下準備のために記録を辿ってみたら、2年半のブランクをはさんで、
現在までに27回の相談が来ていたことが分かる。
記録を読み返してみると、そのときどきの相談内容もさることながら、
自分の心の動きも振り返ることができて、なかなか興味深い。

記録を元に、初めて電話をかける時点で、すでに相談者が自分の問題を
解決したいと思っているように感じられたこと、
「不安」という身体的な(と私は思っているのだが)問題を
言葉で解決するのは難しく、どうしたものかと悩んだ時期があること、
そして結局、あなたとはいつもつながっているよっていうことが
相手に伝わればいいのだと分かったことなどを、経過報告と絡めて話す。

参加者からは、精神疾患は対応を誤るとやっかいなこと、
サポートに当たっている側は、ともすれば自分の役割だけに終始し、
目的地はどこかを設定できずにコトが運ばれる傾向は、
地域医療だけでなく、チーム医療などでも共通の問題になっていること、
(みんながトスを上げるのだけど、誰もあっち側へボールを返さない
という愉快な比喩は、ひょっとして組織一般に共通する問題かもしれない)
研修生の時のシビアな経験が、その後のものの見方や方向を決めてしまったという
医療者ならではの心情なども聞くことができて、有意義な時間だった。

医療者にとっては、「相談を受ける」ということが、
ともすれば「治療的関係」と理解されてしまうらしいこと、
身体疾患に対処するための「決定論」的発想は
相談には馴染まないってことまでは言及できなかったが、
それは、次回以降の自分の課題にする。

会には医療コーディネーター(MC)の資格を持った人も何人か参加していた。
この資格がどういうものか、私自身はよくは知らないのだが、
話によると、医療者と患者の架け橋のような役割をするものらしい。
つまり、医療者と患者の間にも、男と女の間にあるような
暗くて深い(?)河があるので、そこに橋をかけるか、
もしくは両岸を行き来する渡り船を浮かべよう
というアイデアが結実したのが、MCという職種のようだ。
利用者側に軸足を置きつつ、両者の中間に位置して利用者の意思決定を
支援するという点は、電話相談員と共通している。

勉強会というまな板の鯉になるのは、相談を受けることとよく似ている。
「相手が望むような関係を結ぶ」ためには
「ええい、煮ても焼いてもどうとでもしてくれい」というまな板の鯉のような心境で、
自分を差し出すことが必要になるが、実はこれが結構難しいのだ。
だいたい、まな板に乗るまでがひと苦労なのだが、
それ以前に、自分は鯉なのか鰯なのか、それとも蛸なのかってことが
はっきりしないと、まな板にも乗りようがないってところがある。
MCも相談員も、みんなそこで苦労して、
そして、これは一生の仕事だと愕然とするわけだ。

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コメント

広野さん、こんにちは

すっかり広野さんのブログのファンになっていた私は、NONの勉強会を機に会へお誘いし、さらに広野さんのことをもっと教えていただきたくて事例を出していただくようにお願いをさせていただきました。本当に、ありがとうございます。o(_ _)o

広野さんのおかげで、とても活発な意見交換となり、参加者それぞれが充実した時間を過ごしたように感じています。

今回のブログを読んで、私は一体、鯉、鰯、蛸、、、なんなのだろ~と感じているところです。。。。

投稿: any | 2006年8月24日 (木) 11時31分

anyさん

コメントありがとうございました。

楽しい勉強会でしたね。
もっといろいろな職種(患者さんも含めて)
の輪になって、医療を変えていくような
ムーヴメントが作れるといいなあなんて
考えてしまいました。

これからもよろしく。

投稿: 広野優子 | 2006年8月26日 (土) 07時08分

広野さん

先日は、NONへの参加ありがとうございました。本当にこじんまりとでしたが楽しい会で、今後が楽しみです。

広野さんがコメントに書かれていた

>もっといろいろな職種(患者さんも含めて)の輪になって、医療を変えていくような
>ムーヴメントが作れるといいなあ

って本当にそう思います!!!

実は、楽患ねっとでは、そうした思いを360度カンファレンスという形で実現しています。と言っても、まだ2回ですが、、、
これからNONの方々のお力も借りつつ、こちらも継続的に行っていきたいと思っています。
今後ともどうぞお力をお貸しください。よろしくお願い致します。

投稿: 岩本 ゆり | 2006年9月 1日 (金) 14時20分

岩本さん

360度カンファレンスも、すてきな試みですね。機会があったら参加してみたいです。
今後とも、よろしくお願いします。

投稿: 広野優子 | 2006年9月 1日 (金) 15時42分

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