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2009年9月19日 (土)

擬似的な家族

朝から電話がじゃんじゃんかかる。
あーそうだった、今日は九州のクリニックが休診だったんだと思い出す。
この連休を目指して休診にしているところがいくつかあり、
当方は連休前からすでにお仕事モードである。
休診の先生方は海外旅行へ。いいなあ。
英気を養ってきてね。

昨日はイケアで注文した息子のデスクやイスが夕方届き
本人は夜遅くバイトから帰ってから組み立て始めたために
隣の部屋で寝ている私は途中で目が覚めてしまい、
終わるまで結局寝られず、夜中の3時ごろに完成品を見る。
混乱していた卓上がやっと片付き、他人事ながら嬉しい。
私も増えすぎた本を整理するために書棚を注文してあるのだが
届くのは10月初旬とかで、それまでどの部屋も混乱の極みである。

某SNSで何かにつけてバトルを繰り返していた仲良し(?)のDrが
突然「疲れたから脱会する」と宣言。
大学病院で診療と教育を兼務していながら
医療の崩壊を目の当たりにしているうちに切れてしまったみたいだ。
ネット上の日記というのは、見ず知らずの人に公開して
全然面識のない人から、色々感想をもらうわけだが、
看護とか福祉の専門家に比べて、医師ははるかに敷居が低く、
そういう意味では、まったく距離感を感じさせない書き込みが多くて
最初は戸惑うことが多かった。
でも、ここはそういう文化なんだろうと理解して対応しているうちに
だんだん相手の人柄が見えてきたりして、勉強になることも多く
今では結構楽しめるようになってきた。
ネットのような活字の世界は、所詮言葉だけの世界だから
息子も言うように、どのくらい感情に振り回されないかがカギで、
これができれば、結構快適である。

ネットの中の人柄といっても、面識があるわけじゃなく、
こちらの想像(幻想)にすぎないのだが、揚げ足とりとしか思えないやりとりや、
ちょっとした言葉遣いに腹を立てて言い返したりしているうちに、
何となく親近感さえ感じるようになって、イザいなくなる、
となると、なんだか妙に寂しかったりするのが不思議なところだ。
それは、ふだんから騒がしくって閉口しているような家族の一員が
ふと、旅行で不在になったりすると、穴があいたみたいで
妙に寂しいというのと、ちょっと似ている気もする。
そういう意味では、ネットは擬似的な家族を形成しうると言えるだろう。

もっともちゃんと話が通じているかどうかということになると、
そこは疑問でもあり、その辺も家族に似ている。
どうしてそういう論理展開になるんだろう、とか
なんでここでそういう発言をするのかねー、と思ったりすることは少なくない。
医師は(と一般化するのは間違いだが)、どうも無作法の基準が
甘いんじゃないか、と思うこともしばしばある。
そういうことを誰にも指摘されないまま、今に至っているということが
さまざまな医療の問題の根底にあるんじゃないか、という感じもする。
こんなに独りよがりで、相手に配慮しないで物事を進めてきたツケが
現在の医療崩壊を生んでいるんじゃないか、という風にも思うのだ。
おそらくこんなことを言っても、全然通じないんだろうけど。

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2009年9月15日 (火)

映像から見えてくること

ギンレイへ「ミルク」と「フロスト×ニクソン」を観に行く。
「ミルク」のショーン・ペンは2009年度アカデミー主演男優賞をとっている。
そのせいかどうか、館内は満員である。
いつもは中年以降の観客が目立つが、年齢層も多彩だ。
政治の映画にこんなに人が入るものなんて!
民主党が政権をとって、政治に対する関心も高まっているのかも。

ハーヴェイ・ミルクはゲイで初めて政治家になった人だが
1970年代にゲイを認めさせるのが、どれほど大変だったか。
結局ミルクは同僚の議員に殺されるのだが、
それはゲイの問題とは直接関係のない、むしろ私怨に近いもので、
どの時代にもあり得ることだったところに、
この映画の力点があったのかもと思わせる。
希望を作り出すのは、少数の人間の強い思いで、
それが延々と引き継がれていくのだけれど
それを潰そうとするのは、ごく普通の人間のたわいのなさである。
それにしても、駅ですれ違うだけで相手もゲイだと分かるのだろうか。
もちろんストレートだって、瞬間的に鈴が鳴ったり
赤い糸が見えたりはするのだけど。

「フロスト・・」は、「ミルク」とは違った面白さのある映画だった。
フロストという英国のテレビ司会者をマイケル・シーンが演じている。
「クイーン」で彼が演じたブレア首相は、
聡明な様子が非常に印象深かったが
ここでは最後の最後に逆転するまで、
気弱そうな追い詰められたプレイボーイを、実に巧みに演じている。
フランク・ランジェラ演じるニクソンは、実物とは全然似ていないし
本物よりはるかに重厚なんじゃないか、という感じがするが、
フロストを手玉にとる老獪さは際立っている。
でも、そのほころびは案外予想外の、
自分ではどうにもならないところからだったりするのだ。
それにしても政治家の才能とは、平然と白を黒と言えるものだと唖然。

ディペックスにしても外来小児科の質的研究会にしても
インタビュー映像がカギになっているので、このところ
なんだかヒマがあると映像ばっかり見ている気がする。
外来小児科の先生たちとの研究会では、
インタビュー映像を分析するのに、テープ起こししたテキストを使って
やろうとしていたのを、映像そのものからつかむ方法を編み出そうと提案。
小児科の先生たちは研究の内容よりも、
手早く功を得ることを優先して、既存の方法を使いたがるみたいだ。
既存の方法じゃないと、なかなか認めてもらえない
学会の体質の古さがあるのだろう。
でも、研究というのは自分のためじゃなくて
(もちろん成果を出す喜びは自分のものだが)
世の中のためにあるのだから、体質が古いところに照準を合わせていたら
いつまでたっても前には進めないんじゃないだろうか。
幸いにもリーダーだった長老先生が亡くなってしまったので
これからはミスリードされることなく、好きにやれそうな気がする。

映画やインタビュー映像から、観客が何かを感じとるプロセスは
人が人生から何かを得ることと重なる。
何をそう感じとったかを説明する、というのが目下の課題である。

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2009年9月11日 (金)

『光』を観にいく

朝、隣の歯医者さんで久しぶりに歯のお掃除をしてもらってから
国立新美術館(http://www.nact.jp/)へ展覧会を見に行く。
展覧会も久しぶりだが、国立新美術館へ行くのは初めて。
黒川紀章さんの手による、この美術館は
前から一度行ってみたいと思っていたのだけど、なかなか機会がなかった。
地下鉄乃木坂の出口を間違えたために、ちょっと歩く羽目になったが
おかげで美術館の全貌を外から眺めることができた。
パイナップルを並べたような、というか
緑の巨大な松ぼっくりが居座ったような外観は、
黒川さんが生前「自然との共生」と言っていたとおりで
都会のど真ん中に聳え立つ、巨大な自然みたいだ。

『光』 松本陽子/野口里佳 という抽象画と写真の展覧会は
大作と点数の多さでも、なかなかの迫力だった。
松本陽子さんは計算すると70歳を越えていらっしゃるはずだが、
主にアクリル絵具によるピンクを主張とした光の表現は
何ともエネルギッシュで圧倒されてしまう。
薄塗りを重ねていく手法というのは、私の先生だけでなく
多くの人が取り入れているが、松本さんの絵画からは
もっと体全体を使ってキャンバスに立ち向かっている様子が伝わってくる。
やはり絵画の独創性は、いかに手法を編み出すかというところに
あるのだなあと思わされる。

手法という点では野口さんの写真も同様だ。
写真は今や現実を鮮やかに映し出すものではなく
現実を見るこちらの心象を、いかに表現するかを考えているようである。
色調を変えてみたり、ピントをはずしてみたりすることで、
いつか、どこかで出会ったような思いが浮かび上がる。
海の中の岩の裂け目は、これが地上だったら決して助からない
だろうけど、海の中なら浮かび上がって来れるよね、
という不思議な安堵感を感じさせてくれる。
それは宇宙に感じる安堵感と言ってもいいのかもしれない。
「フジヤマ」に立つ小さな人影は健気だが
それを被写体にする労力というのも相当なものだろう。
写真という表現方法も体力勝負といえそうだ。

ちょうどお昼の時間にかかったので
2階の「サロン・ド・テ ロンド」でランチ。
夫は30脚ほど並んだハンス・ウエグナーの椅子にため息をついてる。
フランスパンにハムとチーズのサンドイッチは、
さりげない味だけどおいしかった。
ここの3階にはポール・ボキューズ氏の「レストラン ボキューズ」がある。
いずれ、ここも来てみようと思いつつ、
今度は地下鉄に直結している出口から帰路へ。
絵を描くにはエネルギーが必要で、
今の私には、なかなかそちらに向けるエネルギーがないけど
いつかまた描いてみたいなあと思いつつ帰宅。

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