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2010年4月17日 (土)

『ORGAN』

久しぶりに娘が出ている芝居を観にいく。
昨年前半は、公演に出すぎて生活ができなくなりそうだったので
後半はきっちり仕事をして、生活優先を厳命したのに
今年になって、オファーがあったので出ないわけにはいかない
という理由で出演を決めてしまった。
「出るなら仕事は辞めるな」と条件をつけたら
雇用主と交渉して、なんとかつなぎとめたらしい。
仕事場では結構利用価値があるようなので
親としては、ひとまず安心する。

親の世代は、まず仕事を確保して
それから楽しみを見つける、という順序で話が展開したが
娘の世代は、楽しみに合わせて生活が作られる。
まあ、シアワセには違いないのだが、
シアワセを保証する基盤が脆弱なのが、親としては困る。
しかし本人は、脆弱さをあまり気にする風がない。
アリのマネはしなくていいとは確かに言ったけれど
キリギリスに変身しろとは言わなかったはず。
誤算である。

さて『ORGAN』という芝居は、臓器移植をテーマにした内容で
ドナー側とレシピエント側の両方の2本立てになっている。

案内には、

elePHANTMoon #9「ORGAN」
http://www.corich.jp/m/s/stage_detail.php?stage_main_id=12994

2010.4/7(水)~18(日)
新宿サンモールスタジオ
http://www.sun-mallstudio.com/access.htm

近い未来。臓器移植法の改正によりドナー(提供者)が
レシピエント(受容者)を選べる制度が確立した世界を
双方の視点から描く"ドナー編"と"レシピエント編"を同時上演。

とある。

今回は時間がないので、娘の出ているレシピエント側の公演を
観ることにしたのだが、幕が開く2日前になって風邪をひいたと
かかりつけ医を受診し、初日2日後には、ひどい声で電話をかけてきた。
熱もなく、身体もつらくないが、声だけが嗄れたらしい。
「一発で治す方法はないか」と言うので
「そういうものはない。行くなら耳鼻咽喉科」と伝えたら
芝居仲間がかかっている耳鼻科を受診したようだった。

レシピエント側の芝居は、どこかの家の居間での会話から始まる。
話が展開するにつれて、年に1回のバーベキューパーティが
おこなわれようとしているのだと分かる。
参加者のカップルのひとりと、その家の娘は不倫関係にある。
それとは別に、これから結婚しようという新たなカップルもいる。
なんだかワケの分からない、妙な雰囲気の男や
マイペースで自信満々な男もいる。
娘の母親は、みんなをもてなすのに心を砕いているように見える。

しかし参加者は年1回のバーベキューパーティが、
だんだん鬱陶しくなってきてもいる。
どうやら集まってきている連中は、事故で死んだ
この家の長男の臓器を移植してもらった連中らしいのだ。
妙な雰囲気の男は、長男を事故で死なせた本人で
自分のネコを救おうとして、人を死なせたということを、
負い目にさせられている。

不倫男のカップルは、男が昇進し
仕事が忙しくなったので、参加はもう無理かもと言い、
新しいカップルは、北海道でパン屋を始めることにしたので
年1回は難しいかもと言う。
娘と母親にとっては、兄の臓器をもらった連中が
だんだんシアワセになっていくにつれて、
恩義を忘れていくようで、それが腹立たしい。
年1回のバーベキューパーティは、
母娘が兄に会うために開いているものなのだが、
自分たちの好意は次第に忘れられつつあるように感じる。

で、みんなが来れなくなったときに何が起こるか。

ネタばれになるので、これ以上は伏せるけれども、
ありそうな展開だけに、非常にブラックである。

これはレシピエント側の芝居といっても、
ドナー側を描いたようでもあり、
ドナーというのは、実は本人ではなくて
周囲の人間かもしれない、と言っているようでもある。
ここでは与える側は、与えられる側に対して優位に振舞っている。
しかしそれは、かろうじてレシピエントの負い目に
支えられているに過ぎないという点で、ないに等しいものでもある。
移植は命をつなぐものには違いないが、
それに付随する関係はつながらない方がいい
と言っているようでもあり、なんとも苦い内容になっている。

この芝居、なかなか台本ができなくて、
演じる方は苦労したらしいが、よくできていることは間違いない。
1時間というコンパクトな作りもよかったといえる。

ERテレフォンクリニックウェブサイト: http://homepage2.nifty.com/er-telclinic


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