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2010年7月14日 (水)

人間という病

ワールドカップが終わった。
日本がベスト16位まで進出したことも嬉しいが
「無敵艦隊」と言われながら、ずっと優勝できなかったスペインが
やっとのことで勝利を勝ち取った、というのがことのほか嬉しい。
スペインのサッカーを見ていると、パスとは相手ではなく
スペースに出すものだと思えてくる。
スペースに出せば、そこへ滑り込んでくるチームメイトがいる
という風に見える。
これができるのは、彼らが常日頃から同じクラブチームで
試合をしており、イキが合っているということが大きいのだろう。
(とオシムも言っていた)
それを支えているのがパスの技術だ。
スペインのサッカーが美しいと言われるのは、
そういうイキの合い方の心地よさとともに、
パスの技術の美しさもあるに違いない。
日本はスペインサッカーを目指しているのかもしれないが、
チームワーク以前のパス技術をもっと上げなければ無理、だとも思う。
これからしばらくは、日本国内ではチームワーク礼賛のオンパレード
になるだろうが(そうやって、個を埋没させるのは日本人の得意技である)
問題はそれ以前にあるんだからね、勘違いしないでね。

1ヶ月の睡眠不足の蓄積を感じながらも
ギンレイに『ハート・ロッカー』がかかったので行くことにする。
『ハート・ロッカー』はアカデミー賞を取ったことで、
早くから観た感想が耳に入ってきたが、あんまり高いものではなかった。
なので、失望するかもしれないけど、もう1本の
『月に囚われた男』が面白そうだから、
ダメだとしても相殺されるだろうと思いながら行く。

あいにく『月に・・・』は最初の15分間に間に合わなかったせいで
肝心の部分を見逃したかもしれないのだが、なかなか面白かった。
タイトルの「囚われた」ということろがミソだと、観終わって分かる。
主人公が精神に異状をきたしてしまったのではないか
(そもそも3年も一人で月に赴任するなんて、できっこない)
と思わせつつ、落としどころはもっと現実的である。
脚本、監督のダンカン・ジョーンズは、あのデビッド・ボウイの
息子だそうだが、この映画で新人監督賞を手にしている。

『ハート・ロッカー』は今年度のアカデミー作品賞受賞作である。
冒頭「戦争は麻薬である」というメッセージが流れる。
これが、この映画のすべてだろう。
死と隣り合わせの極限状態を生き延びるような
過酷な経験を積んでいくと、シリアルだけでも目がくらむような
多くの種類が売られている日常生活の方が
なんだか異常、と思えてくるのは分からなくもない。
「大事なものは、ひとつだけなんだ」と幼い息子につぶやく主人公は、
見方を変えれば「戦争に囚われた男」でもある。

この映画を好戦的と評する向きもあるみたいだが、
私はむしろ、日常に戻ってこれない主人公というものに
向けた監督のまなざしが、共感を獲得したのだろうと思う。
それは反戦か好戦かといえば、もちろん前者なのだが、
それだけではなく、死と隣り合わせであることによってしか
生を感じることのできない人間というものの、ある種の病、
あるいは、どんな環境にも馴染んでしまう可能性がある
人間という病んだ存在、ということなのではないだろうか。

ERテレフォンクリニックウェブサイト: http://homepage2.nifty.com/er-telclinic

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