« 気晴らしチャンネル | トップページ | 『通り過ぎた風景』 »

2011年2月 8日 (火)

専門家の壁が崩れるとき

小児救急電話相談(#8000)の厚労科研班の報告書を
論文に仕立て直す作業をしている。
言いたいことがたくさんありすぎて、
制限字数内に収まるのかどうか見当もつかない。

報告書では#8000の到達すべきレベルを提示した。
論文では、もう少し違うことを言いたいと考えている。
まずは電話相談についての理解が深まるような内容にしたい。
研究班にはだいぶ爆弾を撃ち込んだつもりだが、
まだ相談のやり方という方法論のレベルでしか理解されていない。
電話相談は受け手じゃなくてかけ手が判断する、とかそういう類。
かけ手と受け手の関係性とか、かけ手のニーズとか
医療者のアイデンティティを揺るがしかねないところは
どうしても避けて通ろうとするようなところがある。
まあ、だれでもそういうところはあるからしかたないのだけど。

日曜日はディペックス関連の厚労科研班の
報告シンポジウムがあり、受付業務を担当することになっていたので
バレエはバーレッスンだけで切り上げて会場に向かう。
シンポは「がんと向き合い、よりよく生きるために
-『患者視点情報』の可能性と課題-」という内容。

「国民のがん情報不足感の解消に向けた『患者視点情報』の
データベース構築とその活用・影響に関する研究」の一環だ。
班長の中山先生は、あちこちの研究班を掛け持ちしていて
超忙しそうだが、頭の回転は抜群で話も分かりやすい。
EBMの研究班でも班長をなさっていたときから知っているが、
当時は、う~んこれじゃあ片手落ちじゃ?と思っていたら、
NBMも手掛け始め、とうとう統合化に至ったみたいだ。
道筋としては至極真っ当である。

シンポジウムは中山先生の
EBMというのは臨床の専門的技術と患者の価値観とが
研究成果として統合されたもので、
患者の価値観も含まれているところが重要、とか
EBM is the integration of best research evidence
with clinical expertise and patient values
ガイドラインというのは医療者と患者の決断を支援するもので
assist practitioners and patient decisions
このプラクティショナーは医師だけではなく医療者全般を指し
つまりチーム医療を想定している、
という話から始まる。

患者視点というのが医療者には分かりづらいのは
医療者が患者になるケースが少ないからだが
知識体系が異なる、ということもあるのだろう。
まだ世の中では専門家の知識体系の方が
患者の知識体系より優れていると思われていて
そこのバランスが取れていない。
専門家が患者になったとしても、いわゆる患者視点が持てる
という風にはいかないのが難しいところだが
患者は病気の専門家だという点は押さえておくべきところだ。

医療では専門家と素人の壁はいまだに高いが
世の中はもっと融合が進んでいるのではないか。
中近東で現在生じている事態の報道:
現地16社の報道を、アラビア語、ペルシャ語、トルコ語から
東京外国語大学教師、OB、学生が翻訳して公開してくれているサイト
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/news_j.html
を知ったときは、ちょっと感動してしまった。
こうやって専門家が技量を生かしてくれることによって
私たちは世界とつながることができる。
ここには専門家は何のために存在するのか、
というヒントがあるんじゃないだろうか。
素人に対して優位であることによって
自分の存在価値を確認するのではなく
世の中に何が必要かを見定めて力を発揮してくれる
そういう専門家を、私たちは歓迎する。

ERテレフォンクリニックウェブサイト: http://homepage2.nifty.com/er-telclinic

|

« 気晴らしチャンネル | トップページ | 『通り過ぎた風景』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/159267/50812588

この記事へのトラックバック一覧です: 専門家の壁が崩れるとき:

« 気晴らしチャンネル | トップページ | 『通り過ぎた風景』 »