縁と贈与を取り戻す大転換
#8000の研究班に相談記録をつけることの意味を
レポートにまとめて送る。
このレポートは今年度の報告書に載る予定である。
相談記録とは相談者の声を記録するものであり
それは相談者ニーズをプロセスとして記録するものである。
現行の記録は、症状分類と結果分類にチェックを入れるように
なっているだけで、相談内容そのものは、
どこにも記録されるようになっていない。
レポートでは、電話相談とは個別の事例に意味がある
ことを丁寧に解説し、ついでに記録をつけることが
電話相談の質に関係していること、
電話相談業務そのものにも役立つこと、ひいては
相談員のモチベーションにも関わることを解説しておく。
さっそく、記録用紙の具体的なサンプルと記録の仕方が
知りたいというフィードバックがある。
こういう反応があることは嬉しいことでもあり、
ただちに記録用紙のサンプルと記録の実例を作成する。
でも、すぐには送らないで、しばらく寝かせることにする。
寝かせるのは、これにどのような解説をつけるべきかを
考えるためだが、サンプルがあれば理解できる、
と思ってしまう思考の単純さに
ちょっと反発を感じているからでもある。
そもそも電話相談の目的を「受診抑制」という風に
医療提供側のニーズの解決、と設定したところからして、
まったく電話相談が理解できていないのだけれど、
実施する側にはそういう自覚はないだろう。
「相談する」という言葉の意味を考えてみれば
相談とは、相談する側にニーズがあり、
それを解決するために相談者がおこなうもの
であることは、容易にわかるはずだ。
こんな基本的なことを理解してもらうために、
研究班なんてところで国費を使ってもいいのだろうか。
なんかムダ金を使っている感じがするけど。
でも、人間は間違える動物だと思えばいいのか。
中沢新一さんの『日本の大転換』は、これに似た
原子力利用についての、さまざまな間違いというか
勘違いを、原子力利用と一神教の関係から指摘している。
これまでの私たちの生活は、太陽エネルギーを
化学エネルギーに変換することで恩恵を受けていた。
太陽と多様な縁を結ぶことで成り立っていたのである。
太陽エネルギーは太陽からの贈与と考えられてきた。
多神教の成り立ちは、そのことと重なっている。
原子力エネルギーは、太陽の中で生じている
核融合を取り出して利用する点で、
これまでの太陽エネルギー利用とは原理的に異なる
と中沢さんは言う。
これは、私たちの生態圏の外部にあるものを、
生態圏内部に取り込もうとしたものであり、
本来生態圏内での処理能力を越えていたのだが、
そういう自覚は、特に日本人には、乏しかった。
というのは、日本人の意識の底には、なんだかんだ言っても
多神教による文化が色濃く残っているのに
古臭いという意識が働くせいか、どこかでそれを打ち消し、
そのような観点から考えてみるということなしに
新しい物事や考えに飛びついてしまったからである。
生態圏という縁や交差(贈与)で成り立っているところへ
それらと異質なものを取り込んだという点で、
それは一神教の成り立ちと重なる、と中沢さんは指摘する。
一神教が掲げる絶対的な超越神は、モーゼが聞いたように
「これまでのどのような神とも異なる、世界そのものを創造した」
ものだったからである。
生態圏そのものを創造した神、を考え出してしまうあたりは
抽象思考の面目躍如ではあるのだが。
科学や経済における資本主義が、
一神教を背景に出現してきたことを考えると、
原子力と一神教という、このアナロジーは分かりやすく、
こういう観点から原子力について考えてみる必要は
大いにあると納得がいく。
その意味で、体裁は薄い本だが中身は濃い。
資本主義や商品交換が縁や交差を切り離して
成り立っていると言われてもピンとこない感じがするのは
自分が日本文化(多神教)にどっぷりつかっていて
ホントはないのに、あると感じとってしまうからかもしれないが、
金融資本主義とか、専門分化する科学技術分野などを見れば
このような抽象思考は、あらゆるところに根を張り巡らせていると分かる。
受診を抑制するのに、相談者の相談プロセスに関心を持たない医療、
臓器移植を生み出した医療も根っこは共通だろう。
ERテレフォンクリニックウェブサイト: http://homepage2.nifty.com/er-telclinic
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