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2012年1月16日 (月)

不確実性の座標

年が明けてもう半月経ってしまった。

年末には何本か映画を見た。
『フィフティ・フィフティ』はがんで生存率50%と告知された青年の物語。
ハッピーエンドでホッとする。
『永遠の僕たち』は両親の死を受け入れられなかった青年が
死んでしまうガールフレンドを見送れるようになる話。
加瀬亮の自然な英語がとてもよかった。
日本人の俳優がハリウッド映画で英語を喋ると、
妙に演技っぽくなるのが気に入らないが、
加瀬クンは、洋画でも邦画でも同じ味のところがいい。
こういうのをコスモポリタンというのではないだろうか。

今年最初の買い物は、お正月早々購入した鉄瓶だった。

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今まで使っていた古道具屋で買った骨董品まがいは
錆を取ろうとした夫が穴をあけてしまったので
買い替えることにしたのである。
私はステンレスのケトルでもいいかも、と思ったのだが
夫はどうしても鉄瓶がいいと言い張る。
さんざんオークションを検索した挙句、結局新品の
頭が黒い羊みたいなのをデパートで買うことにしたのである。
鉄瓶は骨董品として結構な人気があるらしくて、
オークションは面白かったが、最初はリーズナブルなのに
終了間際にどんどん値がつり上がるので涙を呑んだ。

鉄瓶は買い替えられるが、身体はひたすらメンテナンスだ。
新年初のマッサージに行ったら
「先週来るのかと思ってました」と言われてしまった。
バレエのレッスンは先週から始まっていたのだが
年末を挟んで2週間も間が空くと、久しぶりのレッスンは
結構疲れて、家で寝ている方を選んだりしてしまったのである。
身体にも骨董的価値というのが出るということは、ないのだろうか。

新年早々の#8000の最終報告会では
小児科医のF先生と連名で演題を出し
発表はF先生にお願いすることにした。内容は、
「これからの#8000の電話相談とはどのようなものであるべきか」
というもので、これまでの3年間、私たちがめげずに
口を酸っぱくして主張してきたことが元になっている。

小児救急医療で、現場を疲弊させないためには、
電話診療まがいのものでトリアージをするのではなく、
ちゃんとした電話相談によって家庭の看護力を上げていくことが大事、
ということを、そもそも電話相談とはどのようなものか、
というところから説き起こした。
これは論文にも書いたし、研究班の中でも主張してきたことだが、
相談をしてくる人は基本的に受診をしようとは考えていない。
「受診したほうがいいかどうか教えて」という一般人の社交辞令を、
しばしば医療者は「受診すべきかどうか判断できない」
という風に捉えるが、これは虫が良すぎる解釈というものである。
そういう対象に向かって、電話相談で「受診の要不要」を
判別したので、受診者を減らすことに貢献できた
と言い募るのは喜劇に近い。
このことは、今回#8000の費用対効果について報告をした
M先生にも拙稿を送り、効果の算出については
注意が必要であると注意を促しておいた。
だからというわけでもないだろうが、今年の報告は、
昨年に比べると随分目配りの利いたものになっていたように思う。
さすがにお医者様というのは優秀である。

発表をお願いしたF先生は電話相談の経験がないこともあり
電話相談のノウハウの部分になると、
ときどき電話診療の感覚が混じってしまうが
その部分は私の方で修正をかけることで、
ずいぶん分かりやすい内容になっていた(と思う)。
「こういう風に比較してもらえると分かりやすい」
という感想をあちこちから聞くことができた。
一般人との対話で医療者が陥りやすい誤解や
医療制度の中における電話相談の位置づけなどは、
さすがに当事者であるF先生のまとめはよくできていた。

F先生とは今年の夏の外来小児科学会年次集会で、
#8000についてのワークショップをおこなうことになり
小児保健学会と合わせて、この成果をなんとか
出版につなげられればと思う。

夏には『小児診療多職種研究会』での講演もある。
電話相談は難しそうということなのか、電話対応についてである。
そのためのデータ分析ができそうなデータを集め始める。
質的データの分析は面倒くさいので、なかなか取り掛かる気に
なれないが、手をつけ始めると面白くなってくる。
私の仕事の場合、クライアント(業務委託者)によって
相談者の主訴が異なる傾向があるのは、
電話のシステムに関連していると思うが、
相談者が「受診が必要」と判断しても
「(相談できれば)受診は不要」と判断しても、
最終的な結論には大きな違いがない。
厳密にはかけ手を尊重するので、若干の違いが出るが
電話のかけ手が見ているこどもの状態には
大きな差はないことは結論を見ると分かる。
違うのは状態をどう判断するかという判断の違いだけなのである。
この判断の違いが何によるのか、というのが実は
私にとってもっとも興味深い部分である。
知識の差や情報へのアクセスなども考えられるが
主には「習慣」だろうというのが私の仮説である。
でもこれは医療の不確実性そのものによると考えるべきかもしれない。
実際喘息ひとつとっても、小児科医のMLでは治療法を巡って
侃侃諤諤の議論が続いている。
医療者にしてからがこれなんだから、
被医療者の判断がまちまちなのは当たり前だし、
これがヒトが関わる仕事の特徴といえるのかもしれない。
日々電話を取っていると、こういうことが体感できるのは
電話自体が不確実性の塊みたいなものだからだ。

小児救急医療に限らず、医療を考えるときには、
そこを押さえてかからないと、対策でも何でも
誤まってしまうのではないかという気がする。
そういえば昨日のディペックスの会議でも
がんの告知がひとしきり話題になった。
不確実性を確実性に読み替える癖は
案外医療者自身に強いのでは、という気もする。

私自身は、小児医療に欠けているのは
こどもはどのくらい死なないか(丈夫か)という
アナウンスなんじゃないかと考えている。
つまりマイナスの方向に振れている不確実性の座標を
もう少しプラスの方向に振ってあげればいいのではと思うのだ。
どっちに振れても不確実性自体は変わらないが
不確実性の内容をどうとらえるかで
ずいぶん事態は変わってくるのではないか。
医療は不確実性を確実性に変えることができる、
という誤解だけは解いておいた方がいいように思うのだ。

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コメント

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