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2012年9月13日 (木)

『夢売るふたり』

西川美和監督の新作を近所のシネコンへ観に行く。
日本映画は、どうしても日常をつきつけられる感じがして
なかなか好きになれないが、
『ゆれる』や『ディア・ドクター』の西川監督の最新作ということと、
阿部サダヲという特異なキャラの俳優に惹かれて
観に行くことにしたのである。

松たか子と阿部サダヲの夫婦は
火災で失った自分たちの店を取り戻すために、
結婚詐欺で資金を貯めようとする。
夫という鵜は鵜匠の妻に手綱を握られ、詐欺を重ねる。

およそ結婚詐欺には似あわない夫だが
不思議なことに新しい店を持てるほどに資金が貯まっていく。
阿部サダヲは女を誑し込むほどセクシーでもなく、
誠実を絵に描いた、というわけでもないのに、
ウソと誠実が綾なすキャラクターによって
結果的に女をだましてしまうのである。
騙される、というのは騙しのテクニックが優れているからではなく
騙される側が騙されたくて独り相撲をとるからだとでも言いたげである。

誠実な夫は女を騙すことに誠実(真面目)に取り組むし
資金を貯めることにまい進する一途な妻のことも真面目に受け止めている。
人間、あんまり真面目が過ぎると喜劇になってしまうから
エロチックな場面もシリアスな場面も、どこか現実離れしていておかしい。
観客としては、詐欺がどうのというより、
自転車に乗って家へ帰っていく二人が
この先無事かどうかを見届けたいという気分になる。
観客も多かれ少なかれ、欺きに満ちた現実の中で
帰り道を探す人生を送っているということかもしれない。

夫が金のためではない人生を送れそうな気になったときに
事件が起きる。

そしてここでも夫は誠実に騙しを貫徹する。
そうすることがすべてを丸く収める平和のため、とでも言いたげである。
妻はひたすら夫の夢のために騙しの策を練り、
夫はそれに乗るのだが、そこには自分の夢のためというより
2人の夢のためという大義名分があるような感じがする。
その分だけ、夫の振る舞いはどこか他人事のようでもある。

う~む。

男と女はそんな風に違うということなのかも。
タイトルが夢を「追う」ではなく
夢を「売る」なのは、ふたりが見ている夢は微妙に違う
と言いたかったからだろうか。
鵜匠と鵜は、共に鮎という決して自分のものにはならない
夢を売って生きていると考えれば分かりやすいだろうか。

ERテレフォンクリニックウェブサイト: http://homepage2.nifty.com/er-telclinic

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