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2012年10月30日 (火)

『アルゴ』

Movemberという11月の1ヵ月間、口髭を生やし続けるという、
オーストラリア生まれのユニークな市民運動がある。
男性の健康についての意識啓発と研究推進を目的としたイベントだそうで
1ヶ月間頑張って口髭(MoはMoustacheのMo、vemberは
11月のNovemberからとっているとのこと)を伸ばすというものである。
髭の伸び放題というのは通常病いか無精によるものだから
これを健康の意識啓発の題材にするという発想は
ちょっとアクロバティックでよく分からないが、
1ヶ月経ったら少しは理解が進んでいるかもしれない。

口髭といえば『アルゴ』のベン・アフレックの髭はなかなかセクシーである。
ベン・アフレックの映画はマット・デイモンとの
『グッド・ウイル・ハンティング』しかちゃんと観たことはなく、
いまひとつ興味をそそられなかった。
マット・デイモンはボーンシリーズやオーシャンシリーズを経て
アクションから家庭的な父親に上手に着地してしまったのに、
ベン・アフレックは、いつまでもその辺をうろついている
不良みたいな印象が強く食指が動かなかったのである。

『アルゴ』の彼はCIAのスタッフで最終的には
奇想天外なストーリー(これが実話!)で人質救出を成功させる
ような骨のある人物だが、私生活では妻と別居しており
息子ともなかなか会えないでいる。
髭面がなんとなく寂しい感じを与えるのは、そのせいなのだ。
観に行こうと思った直接の動機はイランからの人質救出という
話の内容に惹かれたからだったがベンの髭面から受ける印象が
なんとなく話の奥行きを感じさせたことも大きい。

しかもこの映画は日経夕刊でも週刊文春でも軒並み
☆4つないし5つを獲得しており、おすぎさんなんか絶賛に近かった。
こうなるとどうしても見てみたいと思ってしまう。
実際劇場には朝の初回でもけっこうな観客が来ており
映画評の力を改めて感じることになった。

なんでもそうだが、評価というのも最近は一筋縄ではいかなくなっていて
評価をどう評価するかが肝心と思わされることが多い。
☆4つがどの程度か、というのは評者によって異なっていて
自分と嗜好が近ければ妥当と思えるが、必ずしもそううまくはいかない。
同じ評者によるものを数多く見ることによって
評価の癖みたいなものは掴めるようになるが
無頓着に星の数だけで観に行ってはずれだったときは、たいそう悔しい。
特に☆5つなんていう満点は期待値が高いだけはずれると失望も大きいのだ。

『アルゴ』は最後までハラハラドキドキで、最後にはホロリとするような
エピソードも用意してあり、それなりによくできているが
まあ☆4つが妥当なところじゃないかな。
でも脚本とベンの髭が思いのほかよかったので
☆1/2おまけといったところか。

ERテレフォンクリニックウェブサイト: http://homepage2.nifty.com/er-telclinic


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2012年10月 6日 (土)

「オーラル・ヒストリー」

2日続けて「オーラル・ヒストリーのためのインタビュー入門編」
のセミナーに出席。
主催したのはイスラエイド(IsraAID http://israaid.co.il/)という
イスラエルのNGO(国際人道支援フォーラム)で、
この団体はこれまでも世界各国でさまざまな支援活動をおこなってきている。
今回はその一環として、東北大震災の被災者の心のケアプロジェクトとして
昨年の震災後4日目に日本に入り続けてきた活動の延長線上にある
オーラル・ヒストリーのためのインタビュー手法を学ぼうというものである。

講師はアミア・リーブリッヒというイスラエルの心理学の大学教授。
セミナーはヒルトン東京の一室を使って行われた。
ヒルトンは今回の震災についても社会貢献として、
被災者や被災の援助者にさまざまなサポートをおこなっているとのこと。
教授やスタッフの宿泊費や部屋の使用も
すべて寄付(donation)によるとのことだった。

場所がすばらしくよいのと通訳付きで参加費無料、
しかも2日間にわたって17時から21時まで
というところに興味をそそられて参加を決めた。

リーブリッヒ教授は1993年に『キブツ その素顔』
という本を出しており、この本もオーラル・ヒストリ([口述記録)で
で構成されている。
どのように口述を取るかという技術や留意点についてが
講義と演習のの中心になった。

内容自体は私がこれまで学んできた電話相談における
コミュニケーションの方法とほとんど同じで、違和感はまったくない。
むしろよくあるインタビュー技術より電話相談に近いとさえ言える。
人の話を聴く手法や語りをとらえるという目的達成には
方法としての違いはさほどないことが分かって面白かった。

初日の演習でおこなった2人一組のインタビューのテーマは、
「子供時代の意味深い経験について」。
日本語で意味深い(meaningful)と言われると
ちょっと構える感じがあるが、これはむしろ「心に残った」
と訳してもらった方がよかったんじゃないかと思う。
こういうときに難しいのは、パートナーとして組んだ相手が
この種のワークにどの程度の経験や感性を持っているか
ということがやってみるまでは分からないことだ。
当たり障りのない話でお茶を濁すのか、本音を語るのか
ちょっと迷ったが、せっかくなので受け止めてもらえるかどうか
という不安を断ち切って少し突っ込んだ話をする。
こちらとしては、覚悟して話したつもりなのだが
その覚悟の部分は伝わらず、相手は自分の引き出し方がよかったので
深い話をしてもらえた、と受け取ったようだった。

うーむ。

どこの世界にも自己中心的な誤解をする人はいるものだ。
彼もがん患者のインタビューをやっているのだけど、
案外相手を感じることなく表面的なインタビューをやっているのかも。
「インタビューされてどうだったか」と先生に聞かれたので
「信頼するのが大変だったが、演習だと思ってやった」と
ちょっとムッとした感情をこめて答える。
これで少しは彼に通じただろうか。
インタビューされる側は相手が聞きたがっていると思う話を
するものだ、という教授の鋭いコメントに少しこころが癒される。

2日目の演習のテーマは「仕事でよかった日、悪かった日」というもの。
結局こちらでも話す側に回ってしまい、自分としては不本意だったが
この日は聞き手がよく、気分よく話すことができた。
相手は看護学の大学教授で、こういうとき看護技術は
なかなか優れていると思える。

大震災のあと、世界中から援助の手が差し伸べられた
という話は聞いていたが、イスラエルのNGOが震災直後から
被災地でさまざまな活動をしているとは知らなかった。
日本国内の団体はどうなのだろうか。

オーラルヒストリーの実際的な活動は
①話してもらうこと
②それらを聴くこと
③共通のテーマの語り(story)を集める
④集めたそれらを何らかの形で世に出す
 (インターネット、書物、アーカイブなど)
で成り立っている。

電話相談という自分の仕事も次の課題は
③と④だと確認できて勇気をもらうことができたのは何よりだった。

ERテレフォンクリニックウェブサイト: http://homepage2.nifty.com/er-telclinic

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