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2015年3月12日 (木)

標準医療の問題とは

前回書いたのがいつだったか、もう忘れてしまったくらい
長い間ブログとご無沙汰してしまった。
ツイッターでどんどん流れてくる話題を追いかけていると
流れをせき止めて考える機会を失いがちだ。

これはまずい、と思っていたら、
先日、何十年ぶりかでランチをした以前の同僚に
「更新しないのは具合が悪いのかと思った」と言われてしまった。

反省。

新富町の小さな和食の店で手の込んだランチをいただきながら
私だけでなく、彼女も病で手術をしたこと、
私より若い別の元同僚がやはり病で今年1月に亡くなったと知る。
彼女はホスピスまで見舞っていてくれていたのだとか。

亡くなった元同僚のように自分の死期を意識して
準備を怠らずに死に臨んだ人もいれば、
BC東京のリーダーだったO君のように、
仲間内で一番長生きするだろうと思われていたのに
交通事故で、あっけなく死んでしまった人もいる。
私たちの年代になれば、明日があるのかどうかは
まったく予測不能だとはいえ、
どう備えればいいんだよーと、いささかショックである。

だからというわけではないけれど、
小児科医のMLに「標準医療」の問題が投げかけられたので
備忘録代わりに、それについて書いておこう。
投稿した先生には個人メールを送ったが、
もう少し考えを整理しておく必要を感じる。

「標準医療」の問題は2つある。

ひとつはエビデンスの質だ。

たとえば火傷や傷の湿潤治療のように
それまでの「標準医療」とはまったく正反対の内容にもかかわらず、
次第に理論と実際が明らかになり、
今や標準になろうとしている医療がある。

レビー小体認知症へのアリセプト投与なども
「標準医療」とされていたが、かえって悪化を招くことが分かってきた。
「標準」といってもそれはその時点での「科学的エビデンスの有無」ではなく
「それまでの習慣」によって定められている場合が多いということなのだろう。
時間や時代に応じて研究が進み、新しい知見が得られて「標準」の内容が
見直されるのは喜ばしいことだが、
「標準」と名付ける基準については
もう少しシビアであってもいいような気もする。

もうひとつは
「標準」の適用可能範囲の問題だ。

患者ではなく症状だけを問題にすれば
「標準医療」とはどの症状にも適用できるものなのかもしれない。
でも、生活の中で生きている人(患者)を対象にすると、
医療内容はむしろ「標準」から逸脱することも多くなるのではないか。

たとえば、がん患者にどんな治療を行うかは
患者の意向を無視してはできない。
がんの種類だけでなく、患者の治療法に対する選択権も関わってくるからだ。
医療者がどんなに相手を無知だと思っても、
治療を拒否する患者に治療はできない。
医療者の究極の使命は、病気の治療ではなく
患者の人生のサポートだからだ。
そこでできることは、患者の意向を最大限尊重しながら
医師の裁量権を駆使して「標準」を個別化、カスタマイズすることだろう。

「標準」という言葉によって、患者の個別の事情が無視されるケースは、
私が携わってきた小児科の時間外電話相談だけでなく
ディペックス・ジャパンなどでの患者の語りでも数多く見られる。
患者の生活や死生観などの価値観を視野に入れると、
「標準医療」はひょっとしたら「標準」から大幅に外れるのが必然で
そうした逸脱を可能にする蛮勇(笑)が、
医師の裁量権というものなんじゃないかという気もするが、
患者とリスクを共有するのを避けたがる医療者の
性向が蛮勇の発揮を阻んでいるのかもしれない。

患者の個別性を医療者に理解してもらい、
医療を少しでも患者に即したものに変えていこうというのが
ディペックス・ジャパンでおこなっている
患者の語りの医療者教育への活用プロジェクトだ。
6月のシンポジウムでは何らかの成果が出せるだろう。
詳細が固まってきたら、またブログにも書くことにします。

ERテレフォンクリニックウェブサイト: http://homepage2.nifty.com/er-telclinic


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