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2015年4月25日 (土)

男と女のファンタジー

同世代の人たちとの交流は話が通じやすく楽しいが
時々あまりの感性の違いに戸惑うこともある。
世代が違う人との感性の違いは当たり前と思えるが
同世代は何となく似ているはずという思い込みが
こちらにあるからだろう。

ギンレイで観た『滝を見に行く』の感想もそうだった。

A氏はこの素人集団がハイキングで見せるおばさんっぽさが
現実の女性を思い出させてとても新鮮でリアルに思えたと言う。
山の中で彼女たちが枯葉の布団にくるまって
奥村チヨの「あなた好みの女になりた~い」と
歌いながら夜を明かすところは、「この歌しかないよな」と
ことのほか気に入ったみたいだった。

私はと言えば、この映画はリアリティ狙いで
作為的に素人を使ったところが見えて感心しなかった。
昼間吐く息が白く見えるような山の中で、
歌を歌いながら夜を明かすというのは、
エピソードとしては面白いかもしれない。

でも

バスハイクに出かけて添乗員とはぐれ、
道に迷ってしまったという軽装で
寒さに震えることもなく楽しく夜を越す、
という設定はどう考えてもウソっぽい。
監督はおそらく山歩きをしたこともあるはずだが、
昼間暖かくても夜は結構冷え込むのが山の天気だ。
女はこれほどまでにたくましく逆境に強い、
と言いたいのかもしれないが、
それならもうちょっと真実味のある設定にしてほしかった
というのが率直な感想だった。

まあ、映画なんだししょせんは作り話なんだから
目くじら立てるほどのこともないのだが、
男のファンタジーから相変わらず抜けられないのだな、
とちょっとがっかりだ。
お互いツアー客という見ず知らずの出会いでも、
助け合い励ましあって事態を乗り切ってしまうのが
女性だと言いたいのは分かる。
でもそれはあまりに日常的な事実なのだ。
同性にとっては当たり前すぎて面白くもなんともない。

だからやせっぽちのりえちゃんが
自分に近づいた若者に何の見通しもなくのめり込み、
プリンターまで購入して公文書を偽造し横領に走る
『紙の月』の方が、なんだかリアルに感じてしまう。
これが女のファンタジーというものなのかもしれない。

もっともこういう女性心理が育った背景については
もう少し丁寧に掘り下げてほしかった。
ウソでも慈善ならOKってところからどうして
抜け出せなかったのか、はこの映画のキモのような気もする。
『ゴーン・ガール』のような女性心理の必然性が描けないのは、
単に日本人の監督に力量がないのか
それとも日本人観客の限界なのか。
芸術を育てるのは観客なのだから。

とはいえ、名門高校から名門私立大学を経て
一流企業の高い地位まで上り詰めて定年退職した
A氏の感性は、案外日本人男性の普通なのだろう。

性差と教育環境が感性を育てる、
という事実はもちろん自分にも当てはまる。
世の中へ出てみて、初めて自分の異質がよく見えた。

そして秋篠宮家の長男がなぜ我が校を選んだのかも
わかった気がした。

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